こんにちは! 部下とのお悩み解決専門家、谷口彰です。
企業研修をしていると、「率先垂範」についてのご質問を多く受けます。
皆さん、自分は組織において、部下に対して、どのような姿勢を見せればよいのか?
という悩みをお持ちのようでした。
今日のテーマは「管理職の率先垂範」についてです。
こんにちは! 部下とのお悩み解決専門家、谷口彰です。
企業研修をしていると、「率先垂範」についてのご質問を多く受けます。
皆さん、自分は組織において、部下に対して、どのような姿勢を見せればよいのか?
という悩みをお持ちのようでした。
今日のテーマは「管理職の率先垂範」についてです。
2019年6月7日 Vol.025
「違和感を感じたときがチャンス」についてです。
会社で部下、同僚・上司にたいして、『違和感・ザワザワ感・モヤモヤ感』を感じたときは、自分が変革する「チャンス」です。
例えば・・・
なぜ部下は業務の指示をしたのに、即対応しようとはしないのか?
⇒私の指示は理解しているのだろうか? 質問すらない・・ 不安になる
なぜ、部下は眉間にしわを寄せながら仕事をしているのだろうか?
⇒仕事が楽しくないのか? 家庭に問題あるのか? 面談しても特になかったけど・・
なぜ、チームは忙しくてバタバタしているのに、残業せずにサッサと帰れるのか?
⇒チームとしての一体感が欠けているのか? それとも私の知らない人種なのか?
クライアント様の声として、平成10年以降の新入社員とは価値観が異なり、同じ日本人とは思えないケースがある。日本人だから同一なんで、いつまでも思っていてはいけない、というお話も聞きました。
みなさんはこんな経験はありませんか?
こんにちは、谷口彰です。
このブログは
の方々には無縁の内容となりますので・・ 対象は下記の方々です。
あなたが対象です!
部下指導は大変ですね。なぜなら・・私の例ですが、1983年(昭和58年)に入社しましたが、そのころは、上司の言葉は絶対服従、やれと言われればやる。カラスは白い、と言われれば「ハイ」と答え、飲みに行くぞと終業5分前に言われても、もちろん参加します!と言ってましたから。
そんな昭和の体験をしている今の30歳以上のあなたにとって、今の平成・令和の社員は「未知との遭遇」だと思います。部下は未確認物体と同じで、よく調べてみないと中身が何か? 昭和のあなたには理解困難な場合があります。
それは、海外での仕事も同じです。アメリカ人、タイ人、インド人とは長いお付き合いですが、その他の国々の方とも短期間ですが、一緒に仕事をしていきました。最初の握手までは問題ありませんが、その後の会議では、「なにを急に言いだすの?」という驚き満載の日々を思い出します。
そんな時は、いつも「俺ってずれているのだろうか?」と自問自答し、いろいろは解を求めていました。性格的に「俺の言うとおりにすればいいんだ!」と言い切れない、気弱さがあったので、それが幸いしたのかもしれません。
別に郷に入っては郷に従え と言っているのではありません。違和感を感じたら、その原因を調べて、適切な対応をすべきだ、と思います。
今の私の立場は、日系企業の現地責任者です。ですから「俺の言うことを聞けばいいんだよ!」と言える立場です。(緊急案件の場合は、勝手に押し切って対応する場合はもちろんあります) でも、違和感を感じた際は、一歩引いて、その原因は何か? を知らべると、かなり異文化理解が深まります。
で異文化理解が出来たのちに、「じゃあ どうするの?」 このプロセスが無いと、いつまでたっても、私の判断は正しいのか? に悩まされますが、プロセスを通じて、決断に自信が持てるようになります。
日本でも同様です。若手=インド人と思えば、ああ、お互いに違うから、まず何が違うのかを理解してみよう、と一歩踏みとどまってみるだけで、かなりの理解が深まり、(昭和が感じている)溝は浅くなってくるはずです。
日々マネージメントに完璧はありません。ただ、日々理解を深めることで、マネージメントに自信が持て、それが完璧(という表現が適切か?はちょっと横に置いて)に近づく道だと思います。
リーダー・経営者の皆さん、違和感はあなたが変わるきっかけです!
今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。
2019年6月6日 Vol.024
「会社のビジョン」についてです。
こんにちは、谷口彰です。
昨日のブログで、「会社はなぜ存在するのでしょうか?」を書きました。
よく本でも雑誌でも、ビジョンを持つ、ビジョンを作る、戦略はビジョンから、ビジョン策定の秘訣、などといろいろと書かれており、過去に何度も読んだことがあります。
が、読むだけで作っていませんでした。しかし、インドで1年経過し、ほぼ中途入社のインド人社員たちと、これからどんな会社にしていくのか? を考えて、「そうだ、フィロソフィーを作ろう!」と思い、1か月考えて作ってみました。
その際、会社は何故存在するのか? は昨日のブログで買いましたが、2022年(3年後)にはどんな姿になっていたいのか? 日々の行動指針はどうあるべきか? などなどを考えました。
今日はWAYの一部である、「2020年ビジョン」について少々書いてみます。
ビジョン(のみならず全体版のWAYをふくめて)作成する際、考えた事は
などを考えました。(単に儲かればよいのですが、インド人社員の家族が、社員の勤務先を誇りと感じる会社としたかったです。もちろん利益も大切ですが)
そこで考えたついたことですが
などなどです。絵空事じゃないの? と思われるかもしれませんが、いつかこれを実現しようと思っています。またはその精神を今の会社に根ずかせよう、と思っています。
インドでは、生涯1つの会社に勤めあげる人は少なく、3年から5年で転職します。今の会社での全員が転職組で、学校を出てすぐの新卒組はだれもいません。また私が赴任してから14カ月で5人が入れ替わりました。これは特に離職率が高いわけではなく、一般的は数値です。
ですから、WAYを明確にして、入社したら即、入社時研修をしますが、その一つとしてWAYを学ぶ時間を取っています。
そして、日本人、インド人マネージメントにお願いしていることは、日々の業務指導のなかで、WAYで使われている言葉を多用してください、と。
それでWAYが単なる壁にかかっている飾りから、日々の業務で活用される「精神的な柱」になっていきます(となることを願っています)
リーダー・経営者の皆さん、あなたの会社には「精神的は柱」がありますか? まずはあなた自身がどのような経営をしたいのか? を明確にして文章化してください。
いろいろなことが見えてきます。
今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。
2019年6月5日 Vol.023
「会社の存在意義」についてです。
こんにちは、谷口彰です。
会社はなぜ存在するのでしょうか?
会社の役割と意義は? 社会的存在は? 企業活動とはなに? などなど、色々な質問が出てきそうですが・・
改めて・・会社はなぜ存在するのでしょうか?
なぜこのブログを書くか? ですが、(皆さんがサラリーマンだろう、という前提で)皆さんはなぜ今の会社ではたらいているのでしょうか?
家から近い、給与がよい、福利厚生が良い、ビルが新しくて洒落ている、会社自体がブランド化している・・ などの色々な理由があると思います。
私は個人の考えを尊重するので、最初のこの会社に興味を持った、という理由は個人がそうであれば・・いいですね。
しかし問題なのは、入社した社員さんが皆バラバラの想いで今も働いているのであれば、それは社員さんは不幸になってしまいます。なぜ皆ここに集まって働いているのか?
会社は必ず創立者が居ます。その方が、自分(周囲)の夢を叶えるために会社を作りました。ですから創業当初は、どの会社も会社設立趣旨 は明確だったはずです。 しかし、しばらくして会社が忙しくなると、会社存続のため収益上げなければ・・と邁進し、そして少しお金の余裕が出てくると・・ふと思います。なぜ私はこの会社で働いているのだろうか? と。
ですから、会社の存在意義はとても大切で、社員さん全員のベクトルを合わせる、施策展開の際、困ったら 会社の存在意義に照らし合わせてみる。などです。
今はインドですが、社員さんはほとんど中途採用です。ある意味その道の専門家です。
人事の専門家、総務の専門家、経理の専門家、営業の専門家 などがひしめき合っています。各人過去の経験から、社内に色々な提案をしてくれます。どれも実効性が高く、とても面白いアイデアです。
しかし、途中から、各人『バラバラ』感が満載となってきます。 あれっ 皆いいこと言っているのに、このバラバラ感は何? と
つまり各自の意見は素晴らしくても、会社としての方向性があり、その施策が本体、会社がすべき施策なのか? などを問いて行く必要があります。
そこでインドの会社は昨年、WAYという会社の進むべき道程を示しました。まだ社内浸透度は30%程度です。これからしつこくWAYの普及活動をします。
そこには、創業者の想い、社会的意義、誰の為に働くのか? たれが一番大切な人なのか?
などなどをA4サイズ1枚にまとめました。
個人的には大変気に入っています(自画自賛・・) 今後はこのWAYがすべての行動指針になってもらえることを願っています。
これはインドの例ですが、日本でもWAY(社是、フィロソフィーなど)と言われていますが、日本の若者は、昭和のおじさん、おばさんたちとは価値観がころなります。きっとインド人と(価値観の違い)あまり変わらないとおみます。
だから、価値観が異なる人が集まる場所としては、WAYは必ず必要であり、これを通じて社員さんが一つのベクトルに向かって進むことができ、それで初めて会社としての一体感を得ることができます。
リーダー、経営者の皆様、WAYを見直して(作って)社員さんとのコミュニケーションのネタとしてください。
今日も最後まで読んで頂きありがとうございます。
2019年6月4日 Vol.023
「日本と海外の『多文化世界』を学ぶ」についてです。
こんにちは、谷口彰です。
海外で働いていると、ヘルート・ホフステッド指標をよく目にします。これはオランダの「ヘルート・ホフステッド」という社会学者が開発した指標です。。
これは、この国の文化と国民性を数値で表すことができるデーターです。これから、その国で働く際、どのようなことに気を付けるべきか? を学ぶことが出来ます。
今インドで働いていますが、私がホフステッド指標から学んだことをご紹介します。
2019年6月3日 Vol.022
「多様性の必然」についてです。
こんにちは、谷口彰です。
海外(今はインドです)で働いていると、当然インド人と日本人の考え方の違いに悩みます。これは当たり前のことで、言葉と歴史、食べ物、気候、宗教などが違えば、生活習慣と考え方は違ってきます。
とはいえ、過去に一緒に働いたことのない国籍の人と、上司と同僚、部下、お客様と協力会社様とは、その場(国)で最適のビジネスとおつきあいをする必要性があります。
(オランダ人学者ヘルート・ホフステードの研究結果が示す、国別のビジネスコミュニケーションの傾向は面白い内容ですが、別の機会に紹介します!)
変化の激しい社会です。VUCAの時代と呼ばれ、予測困難な時代への突入です。いつも正解のあるから過去を検索などして、正解をもとめられた時代から、正解がない、見つからない、という変化の激しい時代では何が必要でしょうか?
いつもと同じ日々を送っていては、急激な変化に対応できません。つまり日々環境が変化しているところに自分を置き、変化に対応する事に慣れる、メンタルを強くする、などなどを繰り返すことで、最後には(自分では気づかないうちに)変化に対応でき、新しい価値観が生まれる環境になってきます。
日本ではの、基本男性社会であり、多様性と言えば「老若男女」程度です。これでは、今グローバルでうごめいている多様性には追い付いていけません。
ネットで大変参考になる文章を見つけました。平成31年度東京大学学部入学式における祝辞の一部です。
あなた方を待ち受けているのは、これまでのセオリーが当てはまらない、予測不可能な未知の世界です。これまであなた方は正解のある知を求めてきました。これからあなた方を待っているのは、正解のない問いに満ちた世界です。学内に多様性がなぜ必要かと言えば、新しい価値とはシステムとシステムのあいだ、異文化が摩擦するところに生まれるからです。
スピーチをされた上野千鶴子さんは、大学入試における「女子の扱い」から始まり、「東大女子」についても言及されています。
未だに男性優位を維持しようとする「日本男子」の思惑、かつ男性よりも学歴の高い東大女子を敬遠しようとしている「日本男子」
私も日本男子として、こういう考え方をもっているのかな~と自省をしました。(答えはない・・と思いますが)
男性優位社会ではありますが、さらに「異物排除する社会」でもあります。これは日本だけではなく世界のどこでもある傾向なのですが・・
以前、会社でとてもクリエイティブな男性がいました。ある企画を提案し、勝手に打ち合わせをして、勝手に出張して、勝手に契約して、結果として、産業経済省から表彰をもらいました。 が、社内評価は悪かったです。理由は、「上司の俺に報告がなかったから」です。
当時の上司の気持ちはわかりますが、世間で認められた業績を残しながら、社内評価が悪い、という矛盾。クリエイティブだが働き方がサラリーマンっぽくない「異物」を排除したい、という上司の強い想い。なぜくクリエイティブな部下とコミュニケーションがとれなかったのでしょうか? (二人とも肌が合わなかったのか?)
理由はともかく、多様性というか今まで出会ったことがないタイプの人間への対応は、しばしば攻撃的となることがあるので注意です。
その点、今の私は気楽です。なぜならインドに居る日本人=私がインドでは異物だからです。異物として何をすればよいのか? 大多数を占めるインド人を理解することです。
理解しよう、理解したい、という気持ちがない限り、相互理解‥ありえません。理解がなければ、ビジネスが上手く回るわけがありません。崩壊するだけです!
今リーダー・経営者である人々が理解すること! それは「あなたが異物なので、しっかりと他人を理解しなければならない」という事です。
新入社員の考え方は理解不能です。取引先の社内文化と自分の会社の文化は違います。最近入社したインド人、インドネシア人、ベトナム人、タイ人、とは皆考え方が違います。つまり、リーダー・経営者の皆さんは、社内的にはマイノリティであり、異物なのです。
ですからリーダー・経営者の方々が積極的に「自分=異物」だから、まず周囲を理解しなければ、という考え方が必要です。
異物の皆さん、まずは自己認識と他者理解が経営の第一歩です。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。参考までに、上野千鶴子さんの東京大学入学式の祝辞全文をご覧ください。
ご入学おめでとうございます。あなたたちは激烈な競争を勝ち抜いてこの場に来ることができました。
女子学生の置かれている現実
その選抜試験が公正なものであることをあなたたちは疑っておられないと思います。もし不公正であれば、怒りが湧くでしょう。が、しかし、昨年、東京医科大不正入試問題が発覚し、女子学生と浪人生に差別があることが判明しました。文科省が全国81の医科大・医学部の全数調査を実施したところ、女子学生の入りにくさ、すなわち女子学生の合格率に対する男子学生の合格率は平均1.2倍と出ました。問題の東医大は1.29、最高が順天堂大の1.67、上位には昭和大、日本大、慶応大などの私学が並んでいます。1.0よりも低い、すなわち女子学生の方が入りやすい大学には鳥取大、島根大、徳島大、弘前大などの地方国立大医学部が並んでいます。ちなみに東京大学理科3類は1.03、平均よりは低いですが1.0よりは高い、この数字をどう読み解けばよいでしょうか。統計は大事です、それをもとに考察が成り立つのですから。
女子学生が男子学生より合格しにくいのは、男子受験生の成績の方がよいからでしょうか?全国医学部調査結果を公表した文科省の担当者が、こんなコメントを述べています。「男子優位の学部、学科は他に見当たらず、理工系も文系も女子が優位な場合が多い」。ということは、医学部を除く他学部では、女子の入りにくさは1以下であること、医学部が1を越えていることには、なんらかの説明が要ることを意味します。
事実、各種のデータが、女子受験生の偏差値の方が男子受験生より高いことを証明しています。まず第1に女子学生は浪人を避けるために余裕を持って受験先を決める傾向があります。第2に東京大学入学者の女性比率は長期にわたって「2割の壁」を越えません。今年度に至っては18.1%と前年度を下回りました。統計的には偏差値の正規分布に男女差はありませんから、男子学生以上に優秀な女子学生が東大を受験していることになります。第3に、4年制大学進学率そのものに性別によるギャップがあります。2016年度の学校基本調査によれば4年制大学進学率は男子55.6%、女子48.2%と7ポイントもの差があります。この差は成績の差ではありません。「息子は大学まで、娘は短大まで」でよいと考える親の性差別の結果です。
最近ノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイさんが日本を訪れて「女子教育」の必要性を訴えました。それはパキスタンにとっては重要だが、日本には無関係でしょうか。「どうせ女の子だし」「しょせん女の子だから」と水をかけ、足を引っ張ることを、aspirationのcooling downすなわち意欲の冷却効果と言います。マララさんのお父さんは、「どうやって娘を育てたか」と訊かれて、「娘の翼を折らないようにしてきた」と答えました。そのとおり、多くの娘たちは、子どもなら誰でも持っている翼を折られてきたのです。
そうやって東大に頑張って進学した男女学生を待っているのは、どんな環境でしょうか。他大学との合コン(合同コンパ)で東大の男子学生はもてます。東大の女子学生からはこんな話を聞きました。「キミ、どこの大学?」と訊かれたら、「東京、の、大学…」と答えるのだそうです。なぜかといえば「東大」といえば、退かれるから、だそうです。なぜ男子学生は東大生であることに誇りが持てるのに、女子学生は答えに躊躇するのでしょうか。なぜなら、男性の価値と成績のよさは一致しているのに、女性の価値と成績のよさとのあいだには、ねじれがあるからです。女子は子どものときから「かわいい」ことを期待されます。ところで「かわいい」とはどんな価値でしょうか?愛される、選ばれる、守ってもらえる価値には、相手を絶対におびやかさないという保証が含まれています。だから女子は、自分が成績がいいことや、東大生であることを隠そうとするのです。
東大工学部と大学院の男子学生5人が、私大の女子学生を集団で性的に凌辱した事件がありました。加害者の男子学生は3人が退学、2人が停学処分を受けました。この事件をモデルにして姫野カオルコさんという作家が『彼女は頭が悪いから』という小説を書き、昨年それをテーマに学内でシンポジウムが開かれました。「彼女は頭が悪いから」というのは、取り調べの過程で、実際に加害者の男子学生が口にしたコトバだそうです。この作品を読めば、東大の男子学生が社会からどんな目で見られているかがわかります。
東大には今でも東大女子が実質的に入れず、他大学の女子のみに参加を認める男子サークルがあると聞きました。わたしが学生だった半世紀前にも同じようなサークルがありました。それが半世紀後の今日も続いているとは驚きです。この3月に東京大学男女共同参画担当理事・副学長名で、女子学生排除は「東大憲章」が唱える平等の理念に反すると警告を発しました。
これまであなたたちが過ごしてきた学校は、タテマエ平等の社会でした。偏差値競争に男女別はありません。ですが、大学に入る時点ですでに隠れた性差別が始まっています。社会に出れば、もっとあからさまな性差別が横行しています。東京大学もまた、残念ながらその例のひとつです。
学部においておよそ20%の女子学生比率は、大学院になると修士課程で25%、博士課程で30.7%になります。その先、研究職となると、助教の女性比率は18.2、准教授で11.6、教授職で7.8%と低下します。これは国会議員の女性比率より低い数字です。女性学部長・研究科長は15人のうち1人、歴代総長には女性はいません。
女性学のパイオニアとして
こういうことを研究する学問が40年前に生まれました。女性学という学問です。のちにジェンダー研究と呼ばれるようになりました。私が学生だったころ、女性学という学問はこの世にありませんでした。なかったから、作りました。女性学は大学の外で生まれて、大学の中に参入しました。4半世紀前、私が東京大学に赴任したとき、私は文学部で3人目の女性教員でした。そして女性学を教壇で教える立場に立ちました。女性学を始めてみたら、世の中は解かれていない謎だらけでした。どうして男は仕事で女は家事、って決まっているの?主婦ってなあに、何する人?ナプキンやタンポンがなかった時代には、月経用品は何を使っていたの?日本の歴史に同性愛者はいたの?…誰も調べたことがなかったから、先行研究というものがありません。ですから何をやってもその分野のパイオニア、第1人者になれたのです。今日東京大学では、主婦の研究でも、少女マンガの研究でもセクシュアリティの研究でも学位がとれますが、それは私たちが新しい分野に取り組んで、闘ってきたからです。そして私を突き動かしてきたのは、あくことなき好奇心と、社会の不公正に対する怒りでした。
学問にもベンチャーがあります。衰退していく学問に対して、あたらしく勃興していく学問があります。女性学はベンチャーでした。女性学にかぎらず、環境学、情報学、障害学などさまざまな新しい分野が生まれました。時代の変化がそれを求めたからです。
変化と多様性に拓かれた大学
言っておきますが、東京大学は変化と多様性に拓かれた大学です。わたしのような者を採用し、この場に立たせたことがその証です。東大には、在日韓国人教授、姜尚中さんも、高卒の教授、安藤忠雄さんもいました。また盲ろう二重の障害者である教授、福島智さんもいらっしゃいます。
あなたたちは選抜されてここに来ました。東大生ひとりあたりにかかる国費負担は年間500万円と言われています。これから4年間すばらしい教育学習環境があなたたちを待っています。そのすばらしさは、ここで教えた経験のある私が請け合います。
あなたたちはがんばれば報われる、と思ってここまで来たはずです。ですが、冒頭で不正入試に触れたとおり、がんばってもそれが公正に報われない社会があなたたちを待っています。そしてがんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったこと忘れないようにしてください。あなたたちが今日「がんばったら報われる」と思えるのは、これまであなたたちの周囲の環境が、あなたたちを励まし、背を押し、手を持ってひきあげ、やりとげたことを評価してほめてくれたからこそです。世の中には、がんばっても報われないひと、がんばろうにもがんばれないひと、がんばりすぎて心と体をこわしたひと…たちがいます。がんばる前から、「しょせんおまえなんか」「どうせわたしなんて」とがんばる意欲をくじかれるひとたちもいます。
あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください。女性学を生んだのはフェミニズムという女性運動ですが、フェミニズムはけっして女も男のようにふるまいたいとか、弱者が強者になりたいという思想ではありません。フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想です。
東京大学で学ぶ価値
あなた方を待ち受けているのは、これまでのセオリーが当てはまらない、予測不可能な未知の世界です。これまであなた方は正解のある知を求めてきました。これからあなた方を待っているのは、正解のない問いに満ちた世界です。学内に多様性がなぜ必要かと言えば、新しい価値とはシステムとシステムのあいだ、異文化が摩擦するところに生まれるからです。学内にとどまる必要はありません。東大には海外留学や国際交流、国内の地域課題の解決に関わる活動をサポートする仕組みもあります。未知を求めて、よその世界にも飛び出してください。異文化を怖れる必要はありません。人間が生きているところでなら、どこでも生きていけます。あなた方には、東大ブランドがまったく通用しない世界でも、どんな環境でも、どんな世界でも、たとえ難民になってでも、生きていける知を身につけてもらいたい。大学で学ぶ価値とは、すでにある知を身につけることではなく、これまで誰も見たことのない知を生み出すための知を身に付けることだと、わたしは確信しています。知を生み出す知を、メタ知識といいます。そのメタ知識を学生に身につけてもらうことこそが、大学の使命です。ようこそ、東京大学へ。
平成31年4月12日
認定NPO法人 ウィメンズ アクション ネットワーク理事長
上野 千鶴子 (ここより引用)